長い間に渡って腰痛の症状でお悩みの人の話を聞いていると
「先生、私は頻繁に腰痛を発生させてしまうんですが、腰痛になりやすい人となりにくい人との違いってあるんでしょうか?」
といった質問を稀にいただきます。
こういった患者さんが疑問に感じるように、腰痛になりやすい人となりにくい人との違いは存在しています。
そこでこのページでは、私が感じている腰痛になりやすい人となりにくい人との違いについて説明させていただきます。
ちなみに私は医療系の国家資格である柔道整復師という資格を持っている人間です(ここをクリックすると私の柔道整復師免許証の写真が出ます)
医療系の国家資格を持っている人間の端くれとして、出来るだけ丁寧で分かりやすい説明を心がけていますので、こういった事に興味のある人は是非参考にして下さいね。
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腰痛になりやすい人は日常動作の中に負担になる動作が隠れている事が多い
このページのテーマにしている腰痛になりやすい人、なりにくい人との違いは至って単純です。
腰痛になりやすい人は、普段の日常生活の中で腰に負担になるような事をしており、腰痛になりにくい人は普段の日常生活の中で腰に負担のかかる動作が少ないんですね。
当たり前の話ではありますが、こういった話をすると納得いかない人も多いと思います。
「先生、私は普段の生活で腰に負担のかかるような動作に心当たりがないんですが・・・」
こういった反論を患者さんから受ける事も実際に多いです。
しかし、はっきり言わせてもらいます。
腰痛になりやすい人はご自分が気がついていないだけで、間違いなく腰に負担のかかる原因動作が日常生活の中にあります。
動作による関節への負担というのは、患者さんが思っている以上に些細な事が原因で発生します。
例えば座っている時の足の位置や頭、お尻の位置関係、何か重たい物を持った時の足の位置やつま先の方向、手作業をしている時の体重がかかっている場所と手の位置との関係、などなど、説明しだしたらキリがないほどちょっとした些細な事が痛みの発生には関わっているんです。
つまり、腰痛になりやすい人はこういった些細な問題点が日常生活の中に本人が気が付かずに潜んでいるんですね。
逆に腰痛になりにくい人は、無意識ではあるでしょうけどもこういった問題点が少ない生活を送っている人が多いんです。
腰に負担のかかりやすい動作
腰にとって負担のかかりやすい動作というのは、腰椎の解剖学的特徴から説明できます。
腰椎の関節は構造上捻じる動きと反る動きには適していません。
つまり、腰は捻じる動きと反る様な動きは負担になりやすいという事になります。
また、人間の関節のほとんどは、関節を支点にした「てこの原理」で動いています。
てこの原理というのは支点より作用点が遠くなれば多くの力が必要になり、近ければ近いほど少ない力で作業が行えます。
少し難しい話ですが、人間の体で言い直しますね。
簡単に言えば自分の立っている位置や座っている位置より遠くで作業をすればするほど、支点になる腰には負担が大きくなり、近くで作業をすれば負担は少なくなるという事です。
へっぴり腰で作業をすると腰が痛くなるのはこういった理由が関係するわけですね。
(お尻を後ろに突き出して腰を曲げるため、手で作業する点と腰との距離が遠くなってしまうため)
つまり何か作業をする時は、できるだけ作業をする場所に近づいて作業をすれば腰への負担は減らせます。
逆に遠ざかれば遠ざかるほど、腰への負担が増えてしまいますのでお気をつけください。
また人間は関節を動かすよりも、ある特定の位置を維持する方が疲労しやすいと考えられています。
例えば腕を上げたり下げたりを繰り返すより、ずっと上げっぱなしの方が疲れますよね?
これと同じ様に座りっぱなし、立ちっぱなしというような、ずっと同じ姿勢や体勢を維持する動作は、腰の負担が大きくなるためできるだけ体勢や姿勢を変えるようにしてください。
日常生活で腰に負担がかかりやすい場面について
上記では、腰に負担のかかる条件の説明をさせていただきました。
ここからは具体的に、患者さんが日常生活の中で気が付かずに腰に負担を入れている動作を簡単に説明させていただきます。
ただし、動作は無限に存在しますので全ての動作をここで説明する事は出来ません。
ここから説明する動作はその中のほんの一例です。
ちなみに私の嫁や両親の動きを参考にさせていただきました。
① 何か物を掴む時に手や肘を伸ばした状態で作業をしてしまう
このページでも説明させていただいたように、人間の関節はてこの原理で動いていますので、自分の位置から遠くで作業をすればするほど支点になっている腰への負担は大きくなります。
リモコンなどの軽い物だと、その場から全く動かずに手や腕だけを伸ばして操作しようと試みる人が非常に多いんですが、こういった些細な動作でも腰への負担は意外と大きいので気をつけましょう。
② 重たい荷物を運ぶ時に腰を捻っている
文章では少し説明しにくいんですが、重たい荷物を運ぼうとした時に腰を捻っている人は非常に多いです。
方向転換をする時は腰を捻るのではなくて、足を動かして方向転換して下さい。
つま先の方向が両足揃って前方を向いた状態で方向転換をすると、腰を大きく捻ってしまうので気をつけて下さいね。
③ 掃除機などを使用中に両足に均等に体重がのっている
①の理由と少し似ているのですが、掃除機をかける時に腕や手だけを伸ばしてかけている人は非常に多いです。
自分の立っている位置から遠くで作業をしてしまうと腰には大きな負担になってしまいます。
実は掃除機に関して手だけを伸ばした動作になってしまう原因は、両足に均等に体重がのっている事が関わっています。
前の方に腕や手を伸ばした時は、同時に片足を前に大きく踏み出して、踏み出した片足にしっかり体重を偏らせるようにして下さい。
そうすれば、腕を伸ばしていても重心の位置は遠ざからず腰への負担は少なくてすみます。
④ 体重のかかっている足と反対側で作業をしている
人間はみんな利き足が存在しており、多くの場合で右か左か体重をかけやすい方向が存在しています。
どちらか片方に偏って体重をかける事に反対意見はないのですが、例えば右足に体重を偏らせてかけているのに、手の作業は左側で行っている人達は結構います。
こうすると、最も体重がかかっている場所と作業をしている場所が遠くになってしまい、支点になっている腰に大きな負担がかかります。
台所などで多い印象を持っています。
自分の右側で作業をする時は右足に体重を少し偏らせて、左側で作業をする時は左足に体重を少し偏らせるようにして下さい。
⑤ 立ちっぱなし、座りっぱなしなどずっと同じ姿勢をとっている事
上記でも少し説明しましたが、人間は関節を動かすよりも、ある特定の位置を維持する方が疲労しやすいと考えられています。
例えば立っている時でも座っている時でも、足の位置やつま先の方向を少し変化させるだけで、腰にかかる圧力の方向は変化して負担を軽減する事につながります。
あまりにもずっと同じ体勢や姿勢でいる事は大きな負担になりますので気をつけて下さいね。
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筋肉を鍛えれば腰痛になりにくいはウソ?
ここまでは、腰痛になりやすい人は日常生活の中に原因になっている動作が存在しているという話をさせていただきました。
ここからは病院や治療院で聞く事の多い「筋肉を鍛えて腰の関節を保護しましょう」という考え方に異を唱えたいと思います。
見出しでも触れているように、私は筋肉の強さと痛みの発生の関係性には疑問を持っています。
はっきり言って、筋力が強ければ痛みにくいという考え方は間違っていると個人的に思っています。
少し難しい話になってしまいますが、筋肉というのは筋繊維という繊維状の物質の集合体で形成されています。
繊維状の物質というのは、その繊維の方向に沿った力に対しては非常に強い抵抗力を発揮します。
しかし、繊維の方向に沿わない「せん断力」のような横からの力が加わると、繊維状の物質は簡単に破壊されてしまうという特徴を持っています。
この特徴は私の仮説でも何でもなくて簡単な物理学になります。
人間の筋繊維はそれぞれの関節の可動域に沿って付着していますので、関節の構造上問題ない動きであればかなりの負担でも耐える事ができ、逆に関節の構造上で問題のある動きであれば、些細な動作であっても簡単に筋肉や組織は破壊されてしまいます。
つまり、どんなに筋力を鍛えた所で、関節の構造上で問題のある動作が加わると痛める事を防ぐ事は出来ないんですね。
具体的な例
こういった事は私が患者さんを診ていた経験則からも、非常に理にかなった考え方だと思っています。
実際にパワーリフティング(重たいバーベルを持ち上げる競技)の全国大会などに出ている選手を一時期何人も診させていただいた経験がありますが、普段は100キロ以上のバーベルを軽々と持ち上げる人々が次々と体を痛める出来事がありました。
あまりにも同じジムに所属している人のケガが続いたので、どんなトレーニングをしているのか聞いてみたら、痛めた人は皆同じトレーニングをしていたんですね。
そのトレーニングとは20~30キロほどの重りを持って、斜め前方向に持ち上げるというトレーニング内容でした(名前忘れました)
このページでも説明したように、作業する場所が自分の重心の位置から遠ざかれば遠ざかるほど体への負担は大きくなる良くない動作です。
その人達は普段であれば100キロ以上のバーベルを軽々持ち上げる筋肉の怪物達な訳ですが、その五分の一程度の重さのトレーニングであっても、動作の方向性に問題がある場合は簡単に痛めてしまうといった良い例だと思います。
つまり、どんなに筋肉を鍛えた所で、関節の構造上にそぐわない方向の力が加わると人間の体は簡単に壊れてしまうんです。
こういった話はこのジムの人達以外でもたくさん診てきました。
まとめ
ここで簡単にまとめさせていただきますね。
腰痛になりやすい人となりにくい人との違いは、日常生活の中に(スポーツも含む)腰の関節の構造上で問題になる動作が関わっているか否かによって決まります。
痛みを改善するために筋力を鍛えるという考え方をよく聞きますが、私は筋力をどんなに鍛えても問題になっている動作を変えない限りは痛みが改善する事は難しいと考えています。
問題となっている動作の一例をこのページで説明させていただきましたが、患者さんが思っている以上に本当に些細な事が原因になっている事は少なくありませんので、一度自分の生活を見直すきっかけにして下さいね。
また、あまりにも痛みを感じるのであれば出来るだけ早く信頼できる病院や治療院に相談するように心がけて下さいね。
もしどこに相談していいか分からない、どこに行ってもダメだったという人は1度私にお気軽にご相談してくださいね。
どこに行っても治らないしつこい腰痛の治療にはそれなりに自信を持っていますのできっとお力になれると思います。
以上で「腰痛になりやすい人、なりにくい人との違いは?」のページの説明を終了させていただきますが、下記に腰痛に関連するページのリンクも載せていますので、興味のある人はそちらも是非参考にして下さいね。
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