脊柱管狭窄症の症状でお悩みの人の話を聞いていると
「先生、私は脊柱管狭窄症になってから極端に筋肉が落ちた気がするんですがスクワットや腹筋などの筋トレをした方が良いでしょうか?」
といった質問をよくいただきます。
このように、ご自分で筋力トレーニングをした方が良いのか迷っている人もいれば、お医者さんなどに筋肉をつけた方が良いとアドバイスされた人も多いと思います。
しかし、私は脊柱管狭窄症の人が腹筋運動やスクワットなど、いわゆる筋トレを行うのは非常に危険な事だと考えています。
そこでこのページでは、脊柱管狭窄症の人が腹筋やスクワットなどの筋トレを行うリスクについて説明をさせていただきます。
ちなみに私は医療系の国家資格である柔道整復師という資格を持っている人間です(ここをクリックすると私の柔道整復師免許証の写真が出ます)
医療系の国家資格を持っている人間の端くれとして、出来るだけ丁寧で分かりやすい説明を心がけていますので、こういった事に興味のある人は是非参考にして下さいね。
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筋肉を鍛えれば脊柱管狭窄症の症状が発生しにくいという事はない?
見出しでも触れているように、私は筋肉の強さと痛みの発生の関係性には疑問を持っています。
はっきり言って、筋力が強ければ体の痛みが感じにくいという考え方は間違っていると個人的に思っています。
そのため、脊柱管狭窄症の人が腹筋やスクワットといった筋トレを行う事には反対です。
少し難しい話になってしまいますが、筋肉というのは筋繊維という繊維状の物質の集合体で形成されています。
繊維状の物質というのは、その繊維の方向に沿った力に対しては非常に強い抵抗力を発揮します。
しかし、繊維の方向に沿わない「せん断力」のような横からの力が加わると、繊維状の物質は簡単に破壊されてしまうという特徴を持っています。
この特徴は私の仮説でも何でもなくて簡単な物理学になります。
人間の筋繊維はそれぞれの関節の可動域に沿って付着していますので、関節の構造上問題ない動きであればかなりの負担でも耐える事ができ、逆に関節の構造上で問題のある動きであれば、些細な動作であっても簡単に筋肉や組織は破壊されてしまいます。
そのため、どんなに筋力を鍛えた所で、関節の構造上で問題のある動作が加わると体を痛める事を防ぐ事は出来ないんですね。
具体的に言えば、脊柱管狭窄症の場合は首や背中や腰の関節が大きく症状の発生に関わっている疾患ですので、どんなに筋肉を鍛えた所で首や背中や腰の関節の構造上おかしな動作をしてしまうと症状の発生を抑える事は出来ないんです。
具体的な例
こういった事は私が患者さんを診ていた経験則からも、非常に理にかなった考え方だと思っています。
脊柱管狭窄症の患者さんではありませんが、実際にパワーリフティング(重たいバーベルを持ち上げる競技)の全国大会などに出ている選手を一時期何人も診させていただいた経験がありますが、普段は100キロ以上のバーベルを軽々と持ち上げる人々が次々と体を痛める出来事がありました。
あまりにも同じジムに所属している人のケガが続いたので、どんなトレーニングをしているのか聞いてみたら、痛めた人は皆同じトレーニングをしていたんですね。
そのトレーニングとは20~30キロほどの重りを持って、斜め上前方向に持ち上げるというトレーニング内容でした(名前忘れました)
人間の関節はてこの原理で力を発生させています。
てこの原理というのは支点より作用点が遠くなれば多くの力が必要になり、近ければ近いほど少ない力で作業が行えます。
少し難しい話ですが、人間の体で言い直しますね。
簡単に言えば自分の立っている位置や座っている位置より遠くで作業をすればするほど、支点になる腰には負担が大きくなり、近くで作業をすれば負担は少なくなるという事です。
つまり何か作業をする時は、できるだけ作業をする場所に近づいて作業をすれば体への負担は減らせます。
逆に遠ざかれば遠ざかるほど、関節への負担は大きくなるという事ですね。
先ほど説明したトレーニングは、斜め上前方向に重りを持ち上げるトレーニングであり、自分の位置からは遠ざかっていく動作ですので関節に加わる負担は非常に大きいんです。
(更に肩の関節の構造上、斜め上に腕を持っていくのは腕が肩関節から抜ける方向の力であり負担は大きいんです)
その人達は普段であれば100キロ以上のバーベルを軽々持ち上げる筋肉の怪物達な訳ですが、その五分の一程度の重さのトレーニングであっても、動作の方向性に問題がある場合は簡単に関節を壊してしまうといった良い例だと思います。
つまり、どんなに筋肉を鍛えた所で、関節の構造上にそぐわない方向の力が加わると人間の体は簡単に壊れてしまうんです。
そのため、筋肉を鍛えれば脊柱管狭窄症の痛みを感じにくくなるという事はないと思いますし、今現在脊柱管狭窄症の痛みを抱えている人は筋肉を鍛えたら脊柱管狭窄症の症状が改善するという事も考えにくいです。
脊柱管狭窄症の人が筋トレを行う危険性
ここまでは、筋力トレーニングが脊柱管狭窄症の痛みの改善にはあまり意味がないという事を説明させていただきました。
まだ意味がないだけならいいんですが、筋トレには脊柱管狭窄症の症状を悪化させる危険性があるんです。
ここからは、その筋トレの危険性について説明させていただきます。
まず筋トレとはどういった理論なのかを簡単に説明させていただきますね。
筋肉に負荷や負担がかかると、その筋肉がダメージを受け筋繊維が損傷してしまいます。
その損傷した部分を修復する時に、同じ様な負荷や負担がかかっても次回からは壊れないようにより強い筋肉がつくられます。
このメカニズムが、一般的にみなさんも知っている筋トレのメカニズムです。
そして負荷や負担が大きすぎると怪我などに繋がるわけです。
ここで覚えておいて欲しい点は1つ。
筋トレというのは、わざと負担や負荷を体にかけるという事です。
ではその点を踏まえた上で、脊柱管狭窄症など体に痛みを抱えている人が筋トレをした場合を考えてみましょう。
脊柱管狭窄症の症状で苦しまれている人の症状にはかなり個人差があると思います。
ですが、多くの症状の中にある共通点があります。
その共通点とは、通常なら何でもない日常動作の中に、痛みを感じるという事です。
言い方を変えれば、普通の状態ならなんでもないような立ち上がったり歩いたりといった弱い負担や負荷が体にかかっただけで、痛みが出る状態になっているという事です。
ご存知の人も多いと思いますが、脊柱管狭窄症とは神経が通っている脊柱管の変形によって中の神経を圧迫してしまい発生する疾患です。
この脊柱管の変形部分には常に強い炎症反応が発生しています。
炎症とは組織が損傷した時に発生する物質で、痛みの情報を脳に伝える事から発痛物質とも呼ばれています。
炎症は組織の損傷部分に発生する物質ですので、背骨や軟骨などの変形部分には通常よりも強い炎症反応が発生しやすくなっているんですね。
この炎症は近くの神経を興奮させて感覚を過敏にさせる特徴を持っています。
感覚が過敏になると、普段であれば負担になりにくい弱い負担や動作でも痛みが発生しやすくなります。
感覚が過敏になるという事は、簡単に言えば、通常よりも負担を感じやすい体になってしまっているという事です。
この様に日常生活の中のわずかな負担や負荷だけで、痛みを感じやすい状況になっている人に筋トレをすればどうなるか?
答えは簡単です。
より症状が悪化します。
筋トレは多くの場合、日常生活よりも体にかける負担や負荷は大きいですから。
スクワットや腹筋運動、もしくは他の筋力トレーニングでも工夫をすれば、かなり体への負担を減らして行う事は勿論可能です。
ただし、日常生活のわずかな負担や負荷でも、痛みを感じるような状態の人にとっては、そういったかなり気をつかった筋トレであっても負担や負荷は大きすぎます。
そして、そもそも上記で説明させていただいた様に、筋力の強さが体の症状の改善に繋がるとは思えません。
こういった事などが私が考える筋トレの危険性です。
実際に脊柱管狭窄症の症状を改善するために一生懸命スクワットや腹筋などの筋トレをして、症状を重症化している人も珍しくありませんので気をつけて下さいね。
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脊柱管狭窄症から発生している症状なのであれば、弱い刺激で行う治療が効果的
ここまでは、脊柱管狭窄症の人が腹筋やスクワットなどの筋力トレーニングを行う危険性について説明させていただきました。
もしあなたが現在感じている症状が脊柱管狭窄症が原因で発生しているのであれば、残念ながら一般的な整骨院などで行われているマッサージや治療では改善しにくい症状のはずです。
実は脊柱管狭窄症の症状は非常に治療が難しく、お悩みの人が非常に多い疾患でもあります。
脊柱管狭窄症のように、背骨の骨や軟骨の変形などが症状に大きく関わっている場合、その周辺には常に強い炎症が発生しています。
炎症は近くの神経を興奮させて、感覚を過敏にさせる特徴を持っています。感覚が過敏になると、簡単に言えば少しの負担やちょっとした動作でも痛みを感じやすくなってしまうんです。
つまり、こういった症状の方にマッサージやバキボキするような、比較的強い刺激で行う治療を行うと、あまり効果がない所か逆効果になってしまう可能性があるんですね。
どこの治療院やマッサージに通っても改善しなかったという人は多いと思いますが、そのほとんどの治療が割と刺激量の多い治療である事が多いと思います。(そちらの方が患者ウケは良いと思いますので)
逆に、優しく弱い刺激で行う治療であれば、治療行為が負担になりませんので改善する可能性があります。
脊柱管狭窄症のように、骨や軟骨の変形や神経の圧迫が痛みに大きく関わっていたとしても、その症状には筋肉の緊張状態や炎症の有無も痛みにはかなりの部分で関わっています。
強い刺激で行う治療では、強い炎症による過敏性が邪魔をして改善する可能性は低いと思いますが、弱い刺激で行う治療であれば、しっかり周辺の筋肉を動かし、血行を促進する事が出来れば炎症や筋緊張は軽減して症状が改善する事も珍しくありません。
弱い刺激の治療を行っている治療院は、あまり多くはないと思いますが、もしよろしければこのページで書かれている事を治療院選びの参考にして下さいね。
もしどこに相談していいか分からない、どこに相談してもダメだったという人は一度私にお気軽にご相談して下さいね。
症状によっては限界もありますが、私は脊柱管狭窄症の治療をそれなりに得意にしていますので。
以上で「脊柱管狭窄症の人が腹筋やスクワットなどの筋トレを行うリスク」のページの説明を終了させていただきますが、下記に脊柱管狭窄症に関連するページのリンクも載せていますので、興味のある人はそちらも是非参考にして下さいね。
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